AIは、人類の知恵の結晶ともいえるものであり、多くの知的財産により保護されています。また、画像や文章を生成しているAIの利用時には、著作権に関する検討が不可欠であり、インターネットを通じて提供されるAIを利用する際には、情報入力の際に情報漏洩の問題を気にする必要もあります。これら知的財産面での検討事項を以下に説明します。
AIと特許との関係
開発したAIや学習済みモデルについては、特許権の取得が可能です。ここで、学習済みモデルの特許の場合、どのようなデータを利用して、どのように学習させたのか、この学習済みモデルが効果を発揮するものなのか、などが特許性の判断で大事になります。
当然、権原無き者の特許取得済みAIの利用は違法となります。AIの利用者が特許権侵害で訴えられる例は少ないとは思いますが、特許権侵害によりAIサービスの利用継続ができなくなる恐れはあります。
AIと著作権との関係
日本での著作権の保護対象は、「思想信条を創作的に表現したもの」です。このため、思想信条を持たないAIが日本での著作者になることはありません。上の画像は画像生成AIのStable Diffusionを用いて生成したものですが、この画像の著作者はいないことになります。
この一方、AIの開発者や学習を行った者が著作権者になることはあり得ます。さらに、たとえば構図を細かく指定して画像生成を行わせた利用者が、その画像の著作者になる可能性は十分にあります。なお、上の画像については、google画像検索で似た画像がないことは確認しています。
AIの学習には著作物を学習用データとして利用可能です(著作権法第30条の4)。しかしながら、このようにして得られた学習済みモデルの利用時には、データとして使用した著作物の著作権を考慮する必要が出てきます。
このため、AIの利用においては、他者の著作権に留意する必要があります。例えばAdobeでは、著作権問題が生じない画像生成AIを提供していますので、このような侵害可能性のないAIを利用するのも一案です。
また、AI生成物は参考情報として利用し、発表等に用いる物には人の手で加工したり、デザイナーに依頼したりするなど、著作権上問題とならないように対策を行うこともよいでしょう。
AIと商標との関係
開発したAIや学習処理を行った学習済みモデルなどをサービス提供する場合には、商標権による保護が大事です。例えば「ChatGPT」を開発したオープンエーアイインコーポレイテッドは、OPENAIの標準文字商標を出願中です(商願2023-024842、令和5年4月現在)。なお、令和5年4月現在、オープンエーアイインコーポレイテッドは「ChatGPT」についての商標は出願していないようです。
AI活用サービスの差別化を図りたい場合、まず商標権による差別化から始めるのが良いでしょう。
また、人が考えた商標の良し悪しをAIに判定させる、というのもいいアイデアかもしれません。
AIと営業秘密との関係
AIや学習済みモデルが営業秘密として保護されるためには、秘密管理性、有用性、非公知性の3要件を満たす必要があります。また、契約者等にのみ情報を示す限定提供データの場合、限定提供性、相当蓄積性、電磁的管理性の3つを満たしていれば、秘密管理性は必要ありません。
また、学習モデル作成やAIの利用時に、営業秘密を利用することもあり得ます。この場合、契約等により営業秘密の漏洩がない様に十分に配慮すること、AIの利用時に営業秘密をそのまま利用しない(問題の無いように加工してから利用する)ことなどを行う必要があります。
以上のことから、企業内でのAIの利用においては、事前にルールを定めておくことが大事になります。
さいごに
AIと知財にもっと知りたい、AIをすでに活用されている方で知財権を取りたい、という方はアイピィフロンティア特許事務所にご相談を。
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