知的財産権について

知的財産権について

知的財産とは

 形のある有体物に対し、形が無い無体物があります。人間の精神活動や社会活動の成果としての情報は無体ですが、何らかの価値を持っています。

 

 有体物でない人間活動における有用な成果物を私有財産として認め、これを保護するために認められた権利が「知的財産権」です。

電子基板


 知的財産法の定義からすると、知的財産や知的財産権とは「財産的価値を有する情報」「財産的価値を有する無体物」といえます。

 例えば、有体財産である自動車にはナンバープレートを取付けることができ、製造番号を記載することもできます。透明なガラスにはステッカーを貼り、ドアには鍵を掛けることができます。

 これに対し知的財産は無体であるので、自分のものであることを示すために自分の名前を書くことができません。

 知的財産にはステッカーを貼ることも、鍵を掛けることもできません。それゆえ盗まれ易く、盗まれたことに気付いたとしても、それが自分のものであることを主張立証することは容易ではありません。

 完全に自分の中に閉じこめ、秘密にしておくことができる場合は盗まれることはないでしょうが、それではそれを利用したり、世の中の役に立てることができません。

 それゆえ、情報通信手段が発達し人的交流が活発化した近代社会においては、このような無体物を有体物と異なる仕組みで保護する必要があります。

 そこで、人間の精神活動の結果として創作される無体物を保護する枠組みとして、知的財産法が設けられています。

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 人間の精神活動の結果物である創作には、種々のものがあり、 それぞれ性質が異なるので、それぞれの性質に合わせた異なった法律の下で保護を図る仕組みとなっています。

 つまり、知的財産法は、これらの法律の束です。知的財産の保護には、条約や協定による国際的枠組みもあります。

 このような知的財産の保護の仕組みを大枠で分けると、「創作意欲の促進」と、「信用の維持」の2つになります。

 「創作意欲の促進」は、人間の創作活動により生みだされるものを保護することによって、創作に対するモチベーションを高め、さらなる創作を生み出すように仕向ける仕組みといえます。

 「創作意欲の促進」を目的とする権利としては、特許権、実用新案権、意匠権、著作権などがあります。

 これらをさらに分けると、特許権、実用新案権、意匠権は、創作意欲を刺激して産業の発達を図る仕組みであり、著作権は創作を保護することによって文化の発展に資する仕組みであると言えるでしょう。

 他方、「信用の維持」は、直接的には商品やサービスなどに付されるマークやロゴ、音声、原産地表示、原産地名称などを保護する仕組みです。

 その目的は、これらに化体されている信用(ブランドイメージなど)を保護することによって、取引の安全を保ち、もって産業の発展に資することです。

会議風景

信頼を維持するために

 

 「信用の維持」を目的とする権利としては、商標権や商号権(不正競争防止法等)があります。

 ところで、知的財産権とは別に「産業財産権」という用語があります。産業財産権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権という4つの権利を意味しています。「知財四権」とも呼ばれています。


 産業財産権も知的財産権の一種ですが、産業財産権は産業とのかかわりがより強い権利であり、特許等は1883年に締結されたパリ条約をスタートとして人類が脈々と作り上げてきた精緻な保護制度の枠組みの下で保護されています。

 なお日本国は1883年より少し遅れてパリ条約に加盟しています。

知的創造物についての権利

特許権

 それまでにない新規で有用な発明をした者に、その発明を独占的に使用収益することを認める権利です。
 独占権を付与するのに値するか否かを予め審査して、独占権を付与するのに値する発明についてのみ、特許権を付与する仕組みになっています。

 独占的な使用収益を認めている点で、独占禁止法の例外とも言えます。

書類

 特許法1条は、「この法律は発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」と定め、その目的が「産業の発達」にあることを明らかにしています。

また特許法2条で、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義し、保護対象が「技術的思想の創作」であることを明らかにしています。

実用新案権

 物品の形状や構造、組み合わせに係わる考案に対して与えられる権利であり、考案を独占的に使用収益することを認める権利です。

 図面に表すことのできる物品に関する技術的思想が保護対象です。方法は保護対象外です。高度さを要件としていない点、存続期間が短い点などにおいて特許権と相違していますが、法目的は特許法と同じです。

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意匠権

 意匠(いしょう)とは、物品の外観に表された美感のことです。意匠権は、物品に表された斬新なデザインを保護する権利です。

 意匠法は、意匠を「物品の形状・模様・色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義しています。

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 デザインそのものは、届け出などの特別な行為をしなくとも、著作権法の保護対象となります。

 これに対し意匠法で保護を受けるには、特許庁に意匠登録出願をして審査を受ける必要があります。

 この審査において、新規性や創作非容易性などの登録要件を満たしているか否かが審査され、満たしているもののみが意匠登録されます。

 意匠登録により初めて意匠権が発生します。意匠権は絶対的排他独占権であり強力です。

 

著作権

 音楽、絵画、図形、映画、写真、文芸、コンピューターのソフトウェアなど、さまざまな表現方法によって表現された著作物(創作物)に対する権利のことです。

 著作権は、スケッチノートに絵を書くような普通の生活の中での行為においても発生している最も身近な知的財産権です。

CD

 著作権法は「文化の発展」に寄与することを目的としており、産業の発達を目的とする意匠法とは法目的や保護の仕組みが異なっています。

 著作権は、著作物についての公表権、氏名表示権、譲渡権、貸与権、複製権、送信可能化権などを内容としており、これらの権利を活用することにより、経済的な利益を得ることもできます。

営業標識についての権利

商標権

 トレードマークやロゴマークなど、商標そのものが持つ信用力(ブランド力)を独占的に使用することができる権利です。

 時間をかけて築き上げたブランド力によって商品やサービスを販売する際に、その商標が持つ集客力を他者に横取りされないために設けられた制度です。

商標登録例
商標登録第6167562号

 商標登録を受けて、安心して商売に励み、営業努力・信用を商標に化体することが末長い発展を約束します。

不正競争防止法による保護

 健全な市場経済を維持するためには、事業者間の競争が公正に行われる必要があります。他人の製品を模倣した商品、産地偽装した商品、品質偽装した商品がまかり通ると、正直者が損をし、消費者が傷つきます。

 また、企業秘密を盗用する行為、他社の営業上の信用を害する虚偽の事実を流す行為などが許されると、正当な方法で生み出された商品が売れなくなってしまいます。

 

親身な相談

 

 このような不正行為を防止し、事業者間の公正な競争や国際約束の的確な実施を確保するための仕組みが不正競争防止法です。

 不正競争防止法は国民経済の健全な発展を目的としており、保護対象は、氏名、商号、商品の形態といった商品等表示や営業上の信用などの無形の財産です。社外秘にしておきたい技術情報や営業情報も一定要件を満たす場合には、「営業秘密」として保護を受けることができます。

 不正競争防止法は出願・登録を条件としていません。よって特許法、商標法等により保護が受けられない場合であっても、不正競争防止法により保護を受けることができる場合があります。

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